カリウム(K+)は細胞内液中に存在する主要な陽イオンで、その細胞内液中濃度(組織細胞中では~150 mmol/L、赤血球中で~105 mmol/L)は、細胞外液(最高 4 mmol/L)よりも25~37倍高くなっています。K+は体内で様々な重要な機能を果たします。たとえば、神経筋の興奮性の調整、心拍リズムの調整、細胞内液・細胞外液量や酸塩基状態の調整などです。
K+基準範囲(成人)-例:男性(血漿): 3.5~4.5 mmol/L
女性(血漿): 3.4~4.4 mmol/L
血清サンプルの測定値は血漿サンプルより若干[3~5 %]高くなります。
カリウムの分布と生理学的意義
人体には約3500 mmol(137g)のK+が存在し、そのほとんどすべてが(98%)細胞内に含まれており、細胞外液内に含まれるK+はたった1.5%で、その濃度は約4.0 mmol/Lです。これと対照的に、細胞内液中のK+濃度はおよそ150 mmol/Lです。
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。
カリウムはなぜ測定するのか?
カリウムの調整の乱れによるK+異常は、様々な急性・慢性疾患で比較的よくみられます。また、一般処方薬による副作用としてもみられます。入院患者ではK+値が異常な患者の割合は20~30%ともされています。K+の異常を治療しない場合、死亡率を高め、最も重度な場合は突然の心停止に至るため、K+異常の診断は重要となります。K+が血液生化学検査で最も頻繁にオーダーされ、測定されるパラメーターの1 つであるのはこれらの理由からです。
細胞外液カリウム濃度の生理学的制御
Acute care testingハンドブックを参照してください。
低カリウム血症の原因
- 利尿剤:最も一般的な原因です。尿中へのK+の異常損失を引き起こす場合があるチアジド系とループ利尿剤の投与時にみられる。
- 重度または慢性の下痢・嘔吐(胃腸管を介したK+ 喪失の増加)
- 代謝性アルカローシス(細胞内へのK+の移動)
- コン症候群(アルドステロンレベルの上昇)
- 糖尿病性ケトアシドーシス治療(尿中へのK+の喪失)
- 不十分なK+摂取(飢餓)
- 下剤の乱用(胃腸管を介したK+喪失の増加)
- 漢方(甘草)の乱用(甘草はアルドステロンレベルの上昇を起こす物質を含んでいるため)
- ベーターブロッカー治療(細胞内へのK+の移動)
- インスリン過剰摂取(細胞内へのK+の移動)
低カリウム血症の症状
Acute care testingハンドブックを参照してください。
高カリウム血症の原因
- 慢性腎疾患-最も一般的な原因(尿中K+排出量の減少)
- 糖尿病性ケトアシドーシスを含む代謝性アシドーシス(細胞外へのK+の移動)
- 横紋筋融解、外傷、大手術(細胞損傷に由来するK+)のような重度組織損傷
- 血液悪性腫瘍に対する細胞障害性薬物治療(薬物による細胞損傷に由来するK+)
- アジソン病(アルドステロンレベルの低下)
- 過度なK+補充療法
- 薬物(ACE 阻害薬、スピロノラクトンなどの「カリウム保持性利尿薬」など)
高カリウム血症の症状
Acute care testingハンドブックを参照してください。