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Creatinine

クレアチニン

クレアチニンは、筋肉細胞内のエネルギー生産に非常に重要な分子であるクレアチン由来の内因性筋肉代謝産物です。クレアチニンは尿を通して体外に排出されます。その血中濃度は糸球体濾過率を反映しているため、腎機能を反映します。

クレアチニン基準範囲(成人)-例:
男性:55~96 μmol/ L(0.62~1.10 mg /dL)
女性:40~66 μmol/ L(0.45~0.75 mg /dL)

クレアチニンの生化学と生理学

クレアチニンはクレアチンの代謝産物です。食事、主に調理肉からも少量は産生されます。クレアチンは腎臓、肝臓、脾臓内で、酵素を介した2 つの反応により生合成され、血液により筋肉に運搬されます。
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

クレアチニンはなぜ測定するのか?

クレアチニンは、腎機能障害を評価するために測定します。すなわち、慢性腎疾患(CKD)や急性腎障害(AKI)を見つけモニターするために測定します。クレアチニンの測定は、患者に腎毒性のある造影剤を用いる画像診断の前に、患者の腎機能の低下を特定するためにも有用です。
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

クレアチニンはいつ測定すべきか?

  • 腎疾患・機能障害の臨床的根拠または病歴がある場合
  • 急性・重症疾患、AKIのリスクが疑われる患者
  • 腎機能障害のリスクがある糖尿病などの慢性病態。この場合、クレアチニン値を定期的にモニターする。
  • コンピューター断層撮影(CT)や核磁気共鳴画像(MRI)で腎毒性のある造影剤使用の前後
  • 潜在的に腎毒性のある薬物の投与前後
  • 主に腎臓から排出される薬物の投与前および投与中

臨床的解釈

クレアチニン濃度は初期無症候性のCKDには感度の低いマーカーですが、腎機能の低下はその原因に関係なく、クレアチニン濃度の上昇が伴います。CKDとAKIの主な違いは進行の速さ、つまりGFRの減少速度です。AKIは数時間、数日にかけて急速に進行し、回復可能で ある一方、CKDは数ヵ月、数年、または数十年にわたってゆっくり進行し、医療的介入で進行を遅らせることはできるものの回復は不可能です。クレアチニン濃度の診断とモニターにおける使用方法は、AKIとCKDで若干異なります。

クレアチニンレベルが正常レベルよりも高い原因

  • 急性腎細尿管壊死
  • 脱水
  • 糖尿病性腎障害
  • 糸球体腎炎
  • 腎不全
  • 筋ジストロフィー
  • 子癇(妊娠誘発 高血圧症)
  • 腎盂腎炎
  • 腎血流不全 (ショック、 うっ血性心不全)
  • 横紋筋融解
  • 尿道閉塞

クレアチニンレベルが正常レベルよりも低い原因

  • 筋ジストロフィー(晩期)
  • 重症筋無力症

詳細についてはAcutecare testingハンドブックを参照してください。

AKI診断におけるクレアチニンの使用法と重症度分類

AKIは腎機能の突発的低下であり、生命に関わる恐れがあります。KDIGO(International Kidney Disease: Improving Global Outcomes、国際的腎臓病ガイドライン機構)はAKIの定義を以下の基準が満たされる場合であるとしています。

「Scrが48時間以内に26 μmol/l(0.3 mg/dL)以上上昇した場合、または基準の1.5倍以上のScrの上昇が過去7日間に起きたことがわかっているまたは推測される場合、あるいは、6 時間にわたって尿量が0.5 ml/kg /h未満である場合」

「基準血清クレアチニン(Scr)は事象の3 月以内に測定された最低クレアチニン値であること。」

詳細についてはAcute care testing ハンドブックを参照してください。

CKD診断におけるクレアチニン・GFRの使用法とCKDのステージ

CKD は心臓血管罹病率および死亡リスクの高い世界的な問題であり、以下のように定義されています。

「身体的異常、あるいは血液または尿成分の異常を含む腎障害指標のいずれか、または画像検査における異常で明示される腎臓の構造的または機能的異常として定義される腎障害が3ヵ月以上継続するもの。GFR 低下はみられることもみられないこともある。」

「3ヵ月以上にわたって GFR 値が 60 mL /min/1.73m2未満が継続するもの。腎障害所見の有無は問わない。」

詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

CKD の症状

排尿時変化、足、足首、手や顔の腫れ、疲労または虚弱、息切れ、アンモニア呼気、口内のアンモニアまたは金属味の味覚異常、腰痛または側腹部痛、かゆみ、食欲不振、吐き気および嘔吐、糖尿病患者の場合は低血糖発作の頻発。

CKD の原因

  • 糖尿病
  • 高血圧症
  • 糸球体疾患(自己免疫、 感染)
  • 遺伝性・先天性 腎疾患
  • 毒物
  • 外傷
  • 薬物療法

詳細についてはAcute care testing ハンドブック を参照してください。

腎毒性薬物

X 線、CTおよびMRIに使用される放射線診断用造影剤は腎毒性をもつものがあります。

腎性全身性線維症(NSF)および造影剤性腎障害(CIN)については Acute care testing ハンドブックを参照してください。

糸球体濾過量の推算

クレアチニン濃度を用いて糸球体濾過量(GFR)を計算することができます。GFRは腎機能を最もよく定義するパラメーターで、初期慢性腎臓病(CKD)を高感度で示唆します。近年では、クレアチニン濃度、年齢、性別、民族性因子に基づく推算 GFR(e-GFR)は、腎機能を評価し、CKD患者を評価する国際的に推奨される手段となりました。成人と子ども用に、一部またはすべての性別や体表面積、人種、年齢によりクレアチニン値を補正した、25を超える e-GFR 計算式が文献に記載されています。

詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

NKDEP推奨の GFR推算式推定

18歳以上の患者のMDRD式

Modification of Diet in Renal Disease (MDRD、成人患者用の腎臓病への蛋白制限と血圧管理の効果を調べた米国の無作為化比較試験) で用いられた式を、糖尿病、高血圧症、心管疾患のリスクファクターや腎疾患の家族歴のある患者、またはすでにCKDと診断された患者の評価に用いることができます。

IDMS(同位体希釈質量分析)に基づくMDRD式は、報告結果が体表面積1.73 m2に標準化されるので、体重や身長を計算要素として必要としません。

詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

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