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血液ガス、「血液ガスと呼吸管理」から

英文タイトル:From Web: “Blood Gases and Respiratory Care “ and others

「血液ガスと呼吸管理」の「血液ガス」部分
インターネットに「血液ガスと呼吸管理」(http://f35.aaa.livedoor.jp/~medtoolz/kokyuukannri/kokyuukannri.html) というタイトルの頁があります。「レジデント初期研修用資料 」( http://medtoolz.s21.xrea.com/index.htm )の一部です。
素晴らしい資料ですが、ここでは「呼吸管理」部分は一応脇において、「血液ガス」部分を紹介します。呼吸管理が全6章のうち5章を占め、血液ガス部分は最初の一章だけですが、分量は全体の1/3くらい、文章だけで13キロバイト、図表も少しあります。
血液ガス部分の執筆態度が呼吸管理部分と少し違うので説明します。呼吸管理部分は、問題全体を歴史を含めて広範囲に説きながら、一方で最先端の問題を詳細に解説しています。これに対して、血液ガス部分では原理の説明を避けて、実戦的な手法中心に解説しています。
たとえば、「140 の原理」として「室内の空気を吸っている場合、肺胞機能が正常な人では大体、PaO2+ PaCO2 = 140」と述べています。ガス交換比Rを無視して、つまり酸素摂取より二酸化炭素呼出量がやや少ない点を考慮の外におくとこうなりますが、大胆な記述です。
こういう書き方をするにはよほど深い学識が必要と私は感じます。内容はきちんとしていますが「特別に高度」ではないので、専門家がわざわざ読むにはものたりないかも知れません。血液ガスの本は、もっとしっかりした記述の例が他にいくつもありますから。それでも、こうした資料があってそれが電子的に入手できるのはありがたいことで、これはこれで大きな使い道があります。私が「入手しやすい血液ガスの教科書」を若い医師やパラメディカルの方々に勧めるとしたら、候補の一つに挙げましょう。
この記事の特徴として、気の効いた魅力的な小見出しが多数あるので、特徴をお知らせする狙いで、「第一章 血液ガスの解釈の基本」からその例をいくつか引用しておきます。(表)
もう一つ、この文章の面白い点として数多い「注釈」を指摘します。真面目な内容、洒落たもの、少しふざけたものがバランスよく書き込まれており、著者が楽しみながら書いている気分が読者にも伝わり、この文章を楽しませてくれます。
この素晴らしい文章に何故か著者の記名がないのが不満ですが、署名がないのも著者の主張の一部と解釈しましょう。ともあれ、私は記事の内容と文章の書き方に改めて感心しました。
既出のものと関係するのをついでに一つ。別に立川察理先生の「呼吸器ノート」を挙げますが、「血液ガス」編もあります( 臨床検査学ノート 立川察理 http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/medical/laboratory/laboratory-note.html)。上記のものほどユーモラスではありませんが、がっちりした構成です。

呼吸療法認定士受験対策
「血液ガス」だけと限りませんが、3学会合同呼吸療法認定士の試験自体についての情報を挙げます。3学会(日本呼吸器学会、日本胸部外科学会、日本麻酔科学会)のホームページの掲示は公式のものですからもちろん有用ですが、特に楽しいものではありません。
一方、「3学会合同呼吸療法認定士受験対策のページ」 ( http://www2.odn.ne.jp/~cdj15610/rt1taisaku.htm) というのがあります。こちらは、個人の方が開いているものですが、問題集を中心に情報満載です。
冒頭の注意書きがこうなっています。「ここの内容は、私が受験した経験を元に、傾向と対策としてまとめたものであり、今回受験される方にとっては問題形式が変わったり、範囲を逸脱する可能性があります。このページを元に受験対策をされるのは構いませんが、あくまでも参考程度にとどめておいて下さい。不合格になったとしても責任は一切負いません。」
それは当然ですが、情報は有用で「過去に出題された分野と内容」として、呼吸療法の歴史、関連法規(届出義務に関して)、生命倫理(患者への説明義務)、解剖と生理(ガス交換、低酸素血症、呼吸生理の基礎と検査法)、呼吸不全の病態と管理、薬物療法、呼吸理学療法、酸素療法、人工呼吸器などで、具体的な問題も数多く載っています。開胸・開腹手術後の肺合併症や新生児・乳児の呼吸管理なども、試験問題になっているのが少し意外でした。

英語の頁
血液ガスを扱っている英語の頁は山ほどあるので、図の多いもの、特に華やかなものを探しましたが、その狙いに対応したものはみつかりませんでした。それで詳しいもの、特徴のあるものを紹介します。
"Mad Scientist Software"のタイトルで血液ガスを詳しく扱った頁( Blood Gases http://www.madscientistsoftware.com/manu/indexgas.htm )が、分量は非常に多いのに、絵や図は皆無ですべて文章をつかった記述で、EKGその他いろいろなマニュアルの一部らしく、"Argyle, B., Blood Gases Computer Program Manual. Mad Scientist Software, Alpine, UT" となっています。最後のUTはユタ州をあらわします。
もう一つ、"All You Really Need to Know to Interpret Arterial Blood Gases by Lawrence Martin, M.D." (http://www.mtsinai.org/pulmonary/index-phys.html ) という頁があります。著者はニューヨークのMt. Sinai の人のようで、内容は同名の本の広告ですが、本の内容の大きな部分をバランスよく提示しており、これだけでもそれなりに有用です。
血液ガスの機器を扱う会社のものとして、デンマークにあるラジオメーターの本社のサイト( http://www.bloodgas.org/ )を挙げておきます。これは"technology "の部分と "other topics" に分かれます。図や絵が意外に少なくて、割合にクラシックな作りです。"other topics"の記事の中では、たとえば高地順化の長い記事に興味を惹かれました。
英語の記事には、特殊テーマで面白いものがいくつかありました。「静脈血の検討 」(www.med.monash.edu.au/healthservices/cce/evidence/pdf/b/490.pdf )や「毛細管血の検討(ガイドライン) 」( http://www.rcjournal.com/online_resources/cpgs/cbgscpg.html) は、いずれも測定法の問題(放置時間や気泡の存在の影響、温度)などを詳しく扱っています。

ともあれ、今回は「血液ガスと呼吸管理」の血液ガス部分が素晴らしいことを再度強調しておきます。

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表 「血液ガスと呼吸管理」の第1章から魅力的な小見出しの例

初診の患者であっても、健康であったときの血液ガスの推定ができる
血液ガスの重症度の割に元気な人は、なにか代償機序が働いている
代謝性アシドーシスを見逃すと危険
最低限アシドーシスが無ければ、この先1 時間は死なない
メイロン投与のガイドライン
1.2.2 代謝性アルカローシスは心不全に多い
代謝性アルカローシスの治療には、クロライド補充を行う
呼吸性アシドーシスは、呼吸筋疲労に合併する
慢性換気不全に合併した呼吸筋疲労~ ちょっと風邪をひいても酸素投与
急性換気不全に合併した呼吸筋疲労~ 低流量酸素は死を招くことがある
急性呼吸筋疲労と慢性呼吸筋疲労の違い(まとめ)
呼吸中枢の異常に伴うアシドーシス

[諏訪邦夫]

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