赤血球は血液中の細胞成分の中で最も多く、ガス交換が主な役割です1)。 赤血球は、肺におけるガス交換により酸素と結合し、動脈内を循環しながら末梢細胞に酸素を運搬し、CO2を回収する役割があり、そのために赤血球は赤色素(Hb:へモグロビン)を有しています。赤血球は貧血の主な指標となっており、関連項目として、Hb、ヘマトクリット(Hct)、平均赤血球容積(MCV)、平均ヘモグロビン量(MCH)、平均ヘモグロヒン濃度(MCHC)があります。
RBCの生理学的背景
赤血球は骨髄中の造血幹細胞より分化、成熟、脱核した後、末梢血に出現します。形状は真ん中にくぼみのある円盤状です。この形状は、効率的なガス交換、外圧・浸透圧への耐性、変形能が高い等の特徴を有しています。また、末梢血に出現直後の細胞にはRNAが一部残存しており、これを網状赤血球(レチクロサイト: Reticulocyte)と呼び、通常、1~2日で成熟細胞となります。
ヘモグロビン(Hb)
ヘモグロビンはヘムとグロビンが4量体となり、1分子のヘモグロビンを形成しています。赤血球中のタンパクの95%を占めます。1分子のヘモグロビンは、肺で酸素と結びつき末梢細胞まで運搬し酸素を供給します。動脈血中には酸素と結合したヘモグロビンであるO2Hbが存在しますが、静脈血中にはほとんど存在しません。単位は g/dLを使用するのが一般的です。
ヘマトクリット(Hct)
血液全体の中の赤血球容積の比率であり、単位は %を使用します。
平均赤血球容積(MCV)
赤血球1個の平均容積(大きさ)は次の計算式により求められ、単位は fLを使用します。
(Hb (%) /RBC数 (106/μL))×10
赤血球ヘモグロビン量(MCH)
赤血球1個に含まれるヘモグロビン量です。次の計算式により求められ、単位は pgを使用します。
(Hb (g/dL) /RBC数 (106/μL))×10
平均ヘモグロヒン濃度(MCHC)
赤血球1個に含まれるヘモグロビン濃度を%で表したもので、次の計算式により求められます。
(Hb (g/dL) /Hct (%))×100
RBCの参考値2)
共用基準範囲
RBC: 成人男子: 4.35~5.55×106/μL
成人女子: 3.86~4.92×106/μL
Hb: 成人男子: 13.7~16.8 g/dL
成人女子: 11.6~14.8 g/dL
パニック値
Hb: 低値 5.0 g/dL
高値 20.0 g/dL
参考文献:
1. 矢富裕、通山薫、標準臨床検査学 血液学検査; 1-26, 2012
2. 日本における主要な臨床検査の共用基準範囲-解説と利用の手引き-; 日本臨床検査標準協議会、基準範囲共用化委員会; 2019
3. 日本臨床検査医学会ガイドライン作成委員会; 臨床検査のガイドライン JSLM2018検査値アプローチ/症候/疾患; 463-464, 2018