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D-dimer

D-ダイマー

D-ダイマーの血中濃度の上昇は、線維素溶解(線溶、フィブリン溶解)が進行中であることを証明し、血栓塞栓症や、凝固性亢進状態に付随するその他の症状の特徴であるフィブリン血栓が形成されたことを示します。D-ダイマー検査は、主に、深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)という(合わせて静脈血栓塞栓症(VTE)と呼ばれる)2つの関連しあう血栓症が疑われる患者の評価において臨床的有用性があります。

D-ダイマーとは何か?

D-ダイマーは、健常な場合、失血に対する防衛として血管損傷からの止血作用として形成されるフィブリン血栓から派生します。フィブリン塊に含まれるフィブリンは、血液凝固カスケードとして知られる複雑なプロセスを経て産生されます。フィブリンはこのカスケードの最終過程で、構造内にD-ドメインと呼ばれる可溶性の血漿蛋白を含むフィブリノゲンから形成されます。凝固カスケードが活性化すると、フィブリノゲンを分解する酵素であるトロンビンが産生されます。この分解産物がD-ドメインを保持するフィブリンモノマーです。フィブリンモノマーは自然に結合し、長い二本鎖フィブリンを有する前原線維を形成します。さらに、トロンビンはもう1つの血液凝固因子XIIIを活性化し、フィブリン前原線維内に含まれるフィブリンモノマーのD-ドメイン間の架橋の触媒となります。その結果として糸のようなフィブリン重合体が不溶性のゲルとして大量に蓄積されます。これがフィブリン塊と呼ばれるものです。

詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

D-ダイマーと静脈血栓塞栓症(VTE)

VTEにはDVTとその続発症で命に関わるPEが含まれます。DVTの原因となる血栓(血液凝固)は、多くの場合、脚または骨盤の深部静脈で形成されます。DVTは遠位DVT(ふくらはぎの筋肉を通る下肢静脈内の血栓)と近位DVT(ひざより上の深部静脈における血栓)に分類されます。遠位DVTが上部に向かって進展(伝播)すると、近位DVTが発現することがあります。PEの発症は、多くの場合近位DVT患者です。すなわち、静脈中の血栓または血栓フラグメントが分解して静脈系から右心系に押し流され、肺動脈を通り最終的に肺の脈管構造に到達します。その結果、血栓フラグメントが到達した部位の肺血流が損なわれ、肺機能の損失(酸素状態の章p.17を参照)、右心系の圧迫を伴う肺血管抵抗の増加に至ります。最終的には、血流が回復しない場合、肺梗塞や心不全を発症します。

D-ダイマー上昇の原因

動脈血栓症

  • 心筋梗塞(MI)
  • 脳梗塞
  • 四肢の虚血
  • 心房細動(Af)
静脈血栓症
  • 深部静脈血栓症(DVT)
  • 肺血栓塞栓症(PE)

詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

D-ダイマーはなぜ測定するのか?

D-ダイマーの上昇を理由にDVTまたはPEを診断することはできませんが、D-ダイマー測定値が正常である場合、DVTまたはPEの可能性を除外することは可能です。

DVTとPEの診断は、静脈の画像診断で行います。DVTが疑われる場合は超音波検査での圧迫テストが、PEが疑われる場合は胸部のCT血管撮影が通常用いられます。D-ダイマー検査は、検査前にVTE(DVTまたはPE)の確率が低いと判断された患者において最も有用です。この場合、検査で得られたD-ダイマー濃度が事前に設定した診断カットオフ値よりも低ければ、VTEの可能性は高い信頼性で除外することができます。

詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

VTE以外のD-ダイマー検査の臨床的有用性

播種性血管内凝固症候群(DIC)は、血管内の異常なフィブリン血栓形成により線溶が亢進し、血中D-ダイマー濃度の顕著な上昇がみられる重篤疾患の合併症です。DICの診断は国際血栓止血学会(ISTH)が考案した、D-ダイマー検査を含む多数の臨床検査の結果に基づく採点法で行われます。

急性大動脈解離が疑われる患者の検査においてD-ダイマー検査が有用である可能性を示す複数のエビデンスがあります。この疾病を持つ患者のほぼ100%にD-ダイマーの上昇がみられ、未だに賛否両論はありますが、陰性のD-ダイマー検査結果で急性大動脈解離の可能性を除外できるのではないかと提言されています。

D-ダイマー検査はいつ行うか、およびD-ダイマー 検査結果の解釈についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。

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