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難治性腹水患者のために妥協なき治療を

KM-CART時の遊離ヘモグロビン定量測定に関する評価

HemoCueを検討するきっかけ

腹水治療センター(以下: 当センター)では、年間約1,000例を超える改良型腹水濾過濃縮再静注法(以下: KM-CART)を実施しており(2018年度:1,203例)、その内約7割を癌性腹水の悪性腹水が占めています。

悪性は全腹水患者の10%程度と報告されており、がん種としては「卵巣がん」「子宮がん」などの女性系がん、「大腸がん」「胃がん」「すい臓がん」など消化器系がんで多く報告されています(2017年がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドラインより)。 また悪性腹水の中には、血性腹水ならびに高度溶血性腹水症例が多く見られます。

しかしながら、高度溶血性腹水に対するCARTは、その治療の特性から遊離ヘモグロビン(以下: 遊離Hb)の濃縮が行われる可能性があり、使用上の注意として「血性腹水の認められる患者」については、「腎障害の可能性がある」とされ「慎重に適用すること」となっており、溶血が疑われる血性腹水患者を受け入れる施設が少ないことも事実です。

当センターではそのような患者も治療ができるように尽力しており、濃縮後の腹水製剤の遊離Hbが高度と考えられる場合には、急性腎障害のリスクを軽減するため、ハプトグロビン製剤の投与を実施するようにしています。

ただし、ハプトグロビン製剤投与のためには、クリアしなければならない課題がありました。「遊離Hbがどれぐらいあるか」をベッドサイドで、かつ迅速に測定することです。遊離Hbの量が分からなければ、本当にハプトグロビン製剤を投与すべきかの判断ができず、その場ですぐに測定できなければ、濾過濃縮後の自己蛋白濃縮液を患者にすぐに投与することができないためです。

そのような中、紹介を受けた機器がHemoCue Plasma/Low Hb*(以下: HemoCue)です。*本装置は"医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律"に分類される医療機器には該当しません。

スタッフの意識改革にも

体外循環等で溶血確認として使用されていたことは知っていましたが、改めて紹介を受けた際に、これをCARTで応用できるのではないかと感じました。特にCARTでは膜の特性上、血球成分は、濃縮後の腹水製剤では濾過されるために問題となりませんが、すでに溶血を起こしている場合には、遊離Hbが濾過されず濃縮されて術後の腎不全の原因になります。

実際に高度溶血腹水でのKM-CART時にHemoCueを使用したところ、簡単な操作性と短時間での定量測定は当センターの臨床工学技士の間では高い評価となっています。

当センターでは年間1,000例以上のKM-CARTを実施しているため、臨床工学技士の業務は日々非常に忙しいものです。そのためいくら有用性が高い検査装置であっても、複雑な操作性や長時間かかる装置であれば、業務を妨げる要因になってしまいます。

特に高度溶血性腹水から作成した濃縮後の腹水製剤の遊離Hb値を迅速に測定できることで、医師や看護師、臨床工学技士だけでなく患者に対しても安心して投与が行えることになったことは高く評価できます。

またこれにより、スタッフ一同が溶血について高い意識を持つきっかけにもなりました。

*詳細については カスタマーストーリー Communicator Vol.39を参照してください。HemoCue.jpサイトからダウンロードできます。

Plasma/LowHbフォトメータのCARTへの応用

症例報告

【症例】
67歳男性、胃癌+高度血性腹水。
第1回KM-CART: 原腹水11.3L、濾過濃縮液1.65L、高度溶血性でバッグ内に血塊あり。
処理時間は236分、回収蛋白206g。

濾過濃縮経過

遊離ヘモグロビン測定結果

KM-CART前後の血液検査結果

*詳細については カスタマーストーリー Communicator Vol.39を参照してください。HemoCue.jpサイトからダウンロードできます。

最後に

HemoCueにより、高度溶血性腹水であっても安全性を確認しながらKM-CARTを実施できるようになったことは、評価できるポイントです。当センターでKM-CARTを実施する患者はがん専門病院や大学病院からの紹介患者が多く、半数近くは終末期の患者となっていますが、KM-CARTは患者のQOLを考えた治療として重要な選択肢となると考えています。

がん性腹水では血性腹水である場合も多いのが現状です。患者に安心して治療を受けて頂くためにも、HemoCueはKM-CARTにおいて必要な装置と考えています。さらに、多くの施設で行われている従来型の内圧式のCARTであれば、腹水への過度の強制圧濾過にて処理中の遊離Hb産生も加わるために、HemoCueによる遊離Hbチェックがより重要となります。

*詳細については カスタマーストーリー Communicator Vol.39を参照してください。HemoCue.jpサイトからダウンロードできます。

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